無愛想な書き出し
三浦綾子さんの「新約聖書入門」から。
私はどちらかといえば、読書好きの方である。欧米の翻訳物もよく読んでいた。くどいほどの自然描写で始まる小説であっても、それほど辟易したことはない。ところがこの新約聖書なる第1ページは、何と無愛想な表情を見せていたことだろう。
といっても、聖書をお持ちの方や、ごらんになったことのある方はおわかりだろうが、聖書を持っていない人は、それがどんなに無愛想な書き出しであるかを、多分想像もできないことと思う。で、次にマタイによる福音書1章の、系図の部分を全文引用してみたいと思う。この冒頭の文を初めて読まれ、「これはおもしろそうだ」とか、「何とすばらしい書き出しだろう」とか最初から思われる方があったら、ぜひお便りをいただきたい。
1:1 アブラハムの子ダビデの子、イエス・キリストの系図。
1:2 アブラハムはイサクをもうけ、イサクはヤコブを、ヤコブはユダとその兄弟たちを、
1:3 ユダはタマルによってペレツとゼラを、ペレツはヘツロンを、ヘツロンはアラムを、
1:4 アラムはアミナダブを、アミナダブはナフションを、ナフションはサルモンを、
1:5 サルモンはラハブによってボアズを、ボアズはルツによってオベドを、オベドはエッサイを、
1:6 エッサイはダビデ王をもうけた。ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけ、
1:7 ソロモンはレハブアムを、レハブアムはアビヤを、アビヤはアサを、
1:8 アサはヨシャファトを、ヨシャファトはヨラムを、ヨラムはウジヤを、
1:9 ウジヤはヨタムを、ヨタムはアハズを、アハズはヒゼキヤを、
1:10 ヒゼキヤはマナセを、マナセはアモスを、アモスはヨシヤを、
1:11 ヨシヤは、バビロンへ移住させられたころ、エコンヤとその兄弟たちをもうけた。
1:12 バビロンへ移住させられた後、エコンヤはシャルティエルをもうけ、シャルティエルはゼルバベルを、
1:13 ゼルバベルはアビウドを、アビウドはエリアキムを、エリアキムはアゾルを、
1:14 アゾルはサドクを、サドクはアキムを、アキムはエリウドを、
1:15 エリウドはエレアザルを、エレアザルはマタンを、マタンはヤコブを、
1:16 ヤコブはマリアの夫ヨセフをもうけた。このマリアからメシアと呼ばれるイエスがお生まれになった。
1:17 こうして、全部合わせると、アブラハムからダビデまで十四代、ダビデからバビロンへの移住まで十四代、バビロンへ移されてからキリストまでが十四代である。