土の器

宮本牧師のブログ

人里離れた所

第2回目のパンの奇跡はどこで起こったのでしょう。ガリラヤのほとり、異邦人の住む地(デカポリス)、そして、弟子たちの言葉によると「人里離れた所」です。イエスが群衆を「空腹のままで解散させてくない」と語られると、弟子たちは言いました。「この人里離れた所で、どこからパンを手に入れればよいのですか」と。口語訳聖書では「この荒野で」と訳されていますので、この奇跡は人里離れた荒野で起こった奇跡と言えます。「荒野で恵みを得た」(エレミヤ31の2)とは、まさにこのことです。 聖書物語の多くは、荒野を舞台としています。中東の風土がそうさせているのですが、失望や絶望を思わせるはずの荒野という言葉が、聖書の中では不思議と何かを期待させるのです。アブラハムも、モーセも、荒野で神の語りかける声を聞きました。出エジプトの物語は、荒野で神の栄光を見る物語です。ダビデ王の詩編の多くは荒野で詠まれました。預言者たちのメッセージは国家の滅亡という荒野で、希望をもたらすメッセージとして響きます。イエス・キリストの福音は荒野で語り始められました。 ヘブライ語では荒野のことを「ミッドバール」と言いますが、元になっているのは、「ダバール(語る)」という言葉です。神の言葉はいつも荒野にあります。ですから、問題は私たちが荒野にいることではありません。人生の試練という荒野で何を見、何を感じ、何を聞き、何を求めるかということです。 昨日、病床にある方を訪問し、「この人里離れた所で、あなたに聞き、あなたを求めさせてください」と祈ってきました。奇跡を信じて。 今日明日と教会員の葬儀です。もう長い間教会に来ることができなくなっていた老兄の葬儀です。主の豊かな慰めを祈ります。