土の器

宮本牧師のブログ

大賀ハス

十字架の前夜、最後の晩餐が終わり、イエスゲッセマネの園に向かう道すがら、弟子たちに最後の教えを語り終えた後、天を仰いで祈られました。ヨハネによる福音書の17章全体が、その祈りになっています。イエスは、御自分のために、弟子たちのために、そして、弟子たちを通して、御自分を信じるようになるすべての者のためにここで祈られました。その最後の言葉はこうです。「わたしは御名を彼らに知らせました。また、これからも知らせます。わたしに対するあなたの愛が彼らの内にあり、わたしも彼らの内にいるようになるためです。」この一句に、イエスがその生涯を通してなされたことと、この後もなそうとしておられたこととが要約されています。 イエスは「御名を知らせました。これからも知らせます」と、まるで種を蒔くかのように、御名を知らせたと言っておられるのです。「涙と共に種を蒔く」と言われている種とは、神の言葉、イエスの御名のことです。実際、ヨハネは、彼が書いた手紙の中で、人を新たに生まれ変わらせる「神の種」という言葉を使っています。 種について、こんなエピソードがあります。1952年(昭和27年)のこと、関東学院大学の教授であった大賀一郎博士は、千葉県検見川遺跡を発掘調査中、地下6メートルの泥炭層で二千年前のものと思われるハスの種を発見し、その種から花を咲かせることに成功しました。キリストの時代に咲いていたその花は、大賀ハスと呼ばれるようになりました。 種というものは小さく、まるで死んだように見えるかも知れませんが、種の中には命が宿っているということです。しかし、その種も大賀博士と出会わなければ、いつまでも深い泥の中に埋もれたままだったかも知れません。私たちの内に与えられている御名も同じです。今年、復活であり、命であるキリストとの出会いによって、神の種が復活し、花を咲かせますように。 余談ですが、大賀博士は、あの内村鑑三の弟子で、札幌農学校で植物学者であったクラーク博士から学んだ内村鑑三に植物学の道に進むように勧められたということです。大賀博士の墓には「ハスの花に神の栄光をたたえて。大賀一郎、ここに眠る。復活のラッパの鳴らん時まで」と刻まれているそうです。 今週も大切なことを大切に。