土の器

宮本牧師のブログ

どうしてほしい? 何が欲しい?

昨年の9月でしたが、福岡県糟屋郡志免町にあるホスピス・栄光病院の名誉ホスピス長であり、牧師でもある下稲葉康之先生が天に召されました。先生はホスピス(終末期ターミナルケア)に関わって40年、「イエス・キリストのいのちこそ、死に向き合う人に最も必要なもの」と言いわれる先生の書かれた本は、どれも死に向かう人々に寄り添う証しがたくさん載っていて、涙なしには読めません。

 

大腸がん術後再発で、副作用の強い治療にも万が一の可能性を期待して頑張ったが、万策尽きて敗戦の将のごとく悄然としての入院となった41歳の医師の話。

ある日、本人に呼ばれて病室を訪ねると、彼は椅子に座っていた。「どうした?」と語りかけた。ところが、彼は応じてこなかった。再度の問いかけにも沈黙のままだった。

思い余って「Kさん、どうしてほしい? 何が欲しい?」と問うた。再び重苦しい沈黙が続いた。私は彼の足をさすりながら、答えを待った。30秒待ち、1分も待ったろうか。沈黙の重さに耐えかねて、彼に語りかけようとしたその次の瞬間、彼はおもむろに口を開け、ひとこと——「いのち」と。

ずしりとのしかかるような重圧を感じた。思い思いひとことだった。彼は医師として自分の厳しい病状は百も承知だった。回復の可能性は万に一つもない。その彼がほしいと願った「いのち」とは何か。

直感的に、それは病気が奇跡的に回復して得られる身体的ないのちではないと思った。それは、死ぬべき自分を支える何か別の「いのち」だ、と。私は自らの思いを整え、主の助けを仰ぎながら「キリストのいのち」を語った。

 

このあと、Kさんの救いと召天に涙する。

さあ、キリストのいのちについて語り合おう。

 

次の日曜日は11月のオープン礼拝です。ぜひお出かけください。

ご来会をお待ちしております。