土の器

宮本牧師のブログ

勇者は帰りぬ

ヨハネ福音書ユダヤ人の祭りを軸に描かれています。特に7章から仮庵祭の前後を舞台に、いくつものエピソードが織り込まれてきました。良い羊飼いの譬えも、9章のシロアムの池の奇跡に連続するエピソードとして学んできました。それはキリストが十字架に付けられる前の年の秋のことでしたが、短いインターバルがあって、ある冬の日の出来事が10章の後半には記されています。 「そのころ、エルサレムで神殿奉献記念祭が行われた。冬であった。」少し歴史の話しになります。この祭りは、新約聖書にしか、しかもここにしか出て来ない祭りです。旧約聖書新約聖書の間には、中間時代と呼ばれる約400年のブランクがあります。この間に起こった出来事がこの祭りの始まりになります。紀元前170年頃、シリアの王アンティオコス4世エピファネスが、エルサレムに攻め上り、都を占領しました。彼は同化政策を敷き、モーセの律法を禁じ、エルサレムの神殿にギリシアの神ゼウスを奉って礼拝を強要しました。それに対し、祭司の子ユダ・マカベウスが独立戦争を起こし、シリア軍との激しい戦闘の末、ついにエルサレムを奪還し、神殿を清めました。この喜びと感謝が、神殿奉献記念祭(ハヌカの祭り)として祝われるようになったのです。ヘンデルの有名なオラトリオ「ユダ・マカベウス」は、この故事を題材にしたもので、「勇者は帰りぬ」のメロディーは、勝利者をたたえる曲として、また賛美歌として親しまれています。 この祭りはユダヤ暦でキスレウの月の25日から8日間祝われますが、ちょうどクリスマス時期の祭りで、今年は、12月25日からの8日間がハヌカの祭りです。ギリシアの神々が奉られた神殿を清めるのに8日間かかったと言われますが、真っ暗な神殿の中を清めるためには、燭台の灯りが必要でした。伝説によると1日分の油しかなかったにも関わらず、8日間灯りが消えることがなかったということで、この祭りには通常の7枝の燭台ではなく、ハヌキヤと呼ばれる9枝の燭台が使われます。 今週も大切なことを大切に。