土の器

宮本牧師のブログ

水を飲ませてください。

ヨハネ福音書の4章を学んでします。サマリアの婦人とイエスとの出会いの物語です。あの日、旅の疲れを覚え、ヤコブの井戸のほとりに座っていたイエスは、誰も水を汲みに来るはずのない昼下がりに井戸にやって来た婦人に「水を飲ませてください」と語りかけました。二人のやり取りが始まります。婦人は面倒くさそうに「ユダヤ人のあなたがサマリアの女の私に、どうして水を飲ませてほしいと頼むのですか」と言い返します。理由がありました。当時、ユダヤ人はサマリア人とは交際していなかったからです。それには民族的な、歴史的な、宗教的な経緯があるのですが、両者は水と油のように互いに相交われない間柄だったのです。交際しないとは、共有するものがないという意味ですが、同じものには手を触れないということです。しかし、イエスは手をすくませることなく、目をそらすことなく、彼女の持っている水瓶で汲んだ水を飲ませてくださいと言い、同じコップから水を飲もうとされたのです。 知的障害者のホームとしてラルシュ・コミュニティを創設したジャン・バニエは、ヘンリー・ナウエンに影響を与えた人物ですが、彼がいかしにしてイエスサマリアの婦人との間にあった壁を取り除いたかと言うことについて興味深いことを言っています。それは「何かをしてあげましょう」という高い所から話しかける方法(上から目線)ではなく、自らが彼女より低い立場になることによって、のどが渇いて、疲れを覚えて、「あなたにお願いがあります。水を飲ませてください。私はあなたを必要としています」と伝えることによって、イエスが彼女との間にあった壁を取り払い、交わりを通して、彼女を神との出会いへと導いていったということです。 ジャン・バニエの言葉です。「人を愛するとは、その人自身の美しさを自分で発見させ、見せてあげることです。あなたは大切な人であり、あなたには価値があると、その人自身に示してあげることです・・・人間は愛されて初めて、愛されるにふさわしいものになります。そして何かが出来るようになります。積極的になります。愛されることによって、人はこの世界で何かを果たすことができるのです」と。 イエスはこの方法で、ユダヤ人とサマリア人の間にあった分厚い壁を打ち破られたのです。そして、イエスはこの方法で、人間と神との間にあった、人間の側からは決して越え得ない大きな溝も埋めてくださったのです。 今週は、70回目の終戦の日を迎えます。世界が平和でありますように。 今週も大切なことを大切に。