土の器

宮本牧師のブログ

最初で唯一で最後

江戸時代、堺の町に吉兵衛という人がいました。商売も繁盛していたのですが、妻が寝たきりの病人になってしまいました。使用人もいたのにもかかわらず、吉兵衛は、妻の下の世話を他人には任せず、忙しい仕事の合間を縫って、してやっていました。周囲の人々が言いました。「よく飽きもせず、なさっていますね。お疲れでしょう。」それに対し、吉兵衛は、こう答えたと言われています。「何をおっしゃいます。一回一回が仕始めで、仕納めでございます。」 この言葉を私は時折思い出して、反省の材料にすることがあります。吉兵衛さんは、この繰り返しを、繰り返しとは考えず、毎回を「仕始め」として、新鮮な気持ちで行い、もしかすると、これが最後になるかも知れないと、心して、ていねいに済ませていたにちがいありません。こういう心を、折にふれて取り戻したいものです。 ずいぶん前のことになりますが、一人の神父が、初ミサをたてるにあたって言った言葉も、私に反省を促します。「自分はこれから、何万回とミサをたてることになるだろうが、その一回一回を、最初で、唯一で、最後のミサのつもりでたてたいと思う。」 皆さんも新しい年を迎える時に、それぞれに立てる決心があることでしょう。私は、吉兵衛さんの「仕始めで仕納め」の心がけと、初ミサをたてた時の神父の「最初で唯一で最後」のていねいさを大切にして生きたいと思います。それは、とかく機械的になりがちな日常を見直して生きるということであり、その日々の積み重ねが、この一年を私の財産となる一年にしていってくれるのではないかと思っています。 「面倒だから、しよう」 渡辺和子 今回の渡辺和子先生の本も素敵ですね。2014年もあっと言う間に20日が過ぎました。今年の目標、決意は思い出し、それを毎日新鮮な気持ちで、今日が最後という覚悟で、ていねいに行っていきたいですね。大切なことを大切に。