土の器

宮本牧師のブログ

カリグラフィ

アップル社の創業者スティーブ・ジョブズ氏の伝説的スピーチと言えば、スタンフォード大学での卒業式スピーチ。YouTubeでも見ることができるので、興味のある方はぜひ一度ご覧ください。ジョブズ氏は、そのスピーチの中で、マッキントッシュが生まれたストーリーを披露しています。冒頭の「点と点をつなげる」は示唆に富んでいます。ジョブズ氏は、リード大学を半年で退学しましたが、実際にやめるまで18ヶ月大学に残り、カリグラフィの授業を聴講していました。(以下、スピーチからの引用です) 私は退学した身。もう普通のクラスには出なくていい。そこでとりあえずカリグラフィのクラスを採って、どうやったらそれができるのか勉強してみることにしたのです。…活字の組み合わせに応じて字間を調整する手法を学んだり、素晴らしいフォントを実現するためには何が必要かを学んだり。…それは美しく、歴史があり、科学では判別できない微妙なアートの要素を持つ世界で、いざ始めてみると私はすっかり夢中になってしまったのです。こういったことは、どれも生きていく上で何ら実践の役に立ちそうのないものばかりです。だけど、それから10年経って最初のマッキントッシュ・コンピュータを設計する段階になってこの時の経験が丸ごと私の中に蘇ってきたのです。そして、僕たちはその全てをマックの設計に組み込んだ。そうして完成したのは、美しいフォント機能を備えた世界初のコンピュータでした。 もし私が大学であのコースひとつ寄り道していなかったら、マックには複数書体も字間調整フォントも入っていなかっただろうし、…そうした機能を備えたパソコンは地上に1台として存在しなかったことになります。もし私がドロップアウト(退学)していなかったら、あのカリグラフィのクラスにはドロップイン(寄り道)していなかった。そして、パソコンには今あるような素晴らしいフォントが搭載されていなかった。もちろん大学にいた頃の私にはそんな先々のことまで読んで“点と点をつなげてみる”ことなんてできませんでした。だけど10年後振り返ってみると、実にハッキリしているのです。繰り返します。未来に先回りして“点と点を繋げる”ことはできない。できるのは、過去を振り返ってつなげることだけなんです。だからこそバラバラの点であっても、将来それが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。…点がつながって道となることを信じることで、心に確信を持てるのです。結果、人と違う道を行くことになっても、信じることで全てのことは、間違いなく変わるのです。 私たちは、ドロップアウトしたり、ドロップインしたり、いろいろなところを通りますが、神様は点と点をつなぐ専門家で、神様のなさることには決して失敗も無駄もないのです。