彼らの言葉で話しかけることが出来たなら!
私たちの神は、私たちを滅びから救うために、人となられた神です。
こんな美しいストーリーがあります。
老いたひとりの農夫がゆり椅子に身をゆだねて、暖炉の火を見つめていた。
遠く教会の鐘が鳴っている。彼はもう長いこと教会に背を向けて生きてきた。
「神が人間になった、だと? ばかばかしい。だれがそんなことを信じるものか。」
眼を閉じ、薪のはじける音を聞きながら、彼はまどろみかけていた。
突然、窓ガラスに 何かぶつかる烈しい物音。それも次々に、さらにさらに烈しく。
何事かと、彼は身を起こした。
窓際に立って見たものは、音もなく雪の降りつもる闇夜の中に、
この家をめざして押し寄せてくる、おびただしい小鳥の群れだった。
雪闇に渡りの途を誤ったのだろうか。
小鳥たちは ともしびを求めてガラス窓に次々と打ち当たっては、むなしく軒下に落ちていく。
彼はしばし呆然とその有様を眺めていたが、
外に出るや雪の降り積もるなか、一目散に納屋へと走った。
扉を大きく左右に開け放ち、電灯を明か明かと灯して、
干し草をゆたかに蓄えた暗い納屋へ、小鳥たちを呼び入れようとした。
彼は叫んでいた。「こっちだ、こっちだ、こっちへ来い!」
しかし、はばたく小さい命たちは、彼の必死の呼び声に応えず、
なおもガラス窓に突き当たっては死んでいった。
農夫は心のうちに思った。「ああ、私が小鳥になって、彼らの言葉で話しかけることが出来たなら!」
一瞬、彼は息を呑んだ! 彼は瞬時にして悟ったのだ。
「神が人となられた」ということの意味を。彼は思わずその場にひざまずいた。
今や、人となり給うた神の神秘に満ちた愛が、ひざまずく老いた農夫を静かに被い包んでいた。
彼の上に降りかかり降り積もる雪は、そのしるしとなっていた。
人知をはるかに超えたロゴスの受肉。
この年老いた農夫と共に、神が人となられたお方の前にひざまずこう。
あっという間の2ヶ月でした。日曜日からもう3月です。