土の器

宮本牧師のブログ

フォーカス

キリストの誕生の場面を、マタイとルカがそれぞれの福音書の中で描いています。マタイは東方の博士の礼拝を、ルカは羊飼いの礼拝を通して、それぞれのメッセージを伝えたのです。 東方の博士は、ペルシャ辺りから来た人々であると考えられていますが、彼らは聖書の民ユダヤ人ではなく、異邦人でした。新共同訳は「占星術の学者」と訳していますが、英語の聖書の多くは「Magi」と訳しています。それはマジックのもとになる言葉で、魔術とか占いという意味を含みますから、彼らは聖書を信じている人々ではなく、異教徒であったということがわかります。彼らは地理的にも民族的にも、そして宗教的にも思想的にも、キリストから最も遠くにいた人々であったと言うことができるのです。しかし、彼らがクリスマスの最初の会衆となり、改宗者となったというのは興味深い話です。 実は、このことがマタイの最後のメッセージと関連してきます。マタイの最後は、有名な大宣教命令で終わります。「あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によってバプテスマを授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。」実に、この言葉に先んじて、マタイはイエス・キリストのストーリーを異邦人の礼拝から始めているのです。一般にユダヤ人のための福音書として知られているマタイによる福音書ではありますが、マタイの神学はそれほど偏ったものではありません。ユダヤ人を通して、全世界にもたらされる救い主こそは、彼の福音であり、私たちへの福音なのです。従って、このテキストにおけるマタイのフォーカスも、お生まれになった幼な子が、すべての人類、人種、民族、国民の救い主であるということなのです。